■あらすじ■

パリの宝石店で仕事を済ませたルパンと次元の前に現れたのは、
毎度おなじみとっつぁん。だが、ルパンを追跡中に何者かに
よって射殺されてしまった！？
翌朝、新聞を見て銭形の殉職を知ったルパンは驚いた。
犯人はルパンだと報じられている。
しかし本当の犯人はパリ警察のトリュフォー警視のたくらみに
よるものだった。
銭形が死ねば、ルパンが真相を確かめに動くはずである。
そこを狙って逮捕し、手柄を上げようとしたのだ。そしてトリュ
フォーは、銭形を撃った射殺官をも口封じのために射殺した。
そうとは知らないルパンは、とっつぁんの生死を確かめるべく
死体安置所に潜入する。しかし、棺の中のとっつぁんは間違い
なく死んでいた・・・。
ルパンは銭形の遺体を盗み出そうとするが、その時を待っていた
のがトリュフォー警視。
万全の体制で挑んできたトリュフォー警視の前に遺体強奪は失敗。
その場はやむなく撤退することに・・・。
しかしなんとしても葬式は自分の手で、と銭形の葬儀に再び狙い
をつけたルパン。
トリュフォー警視の厳重な警備の中、葬儀は終わり、銭形の遺体
は火葬場に到着した。火葬の点火スイッチが入る。
その瞬間、となりの炉の壁が崩れ、潜んでいたルパンと次元が
大急ぎで銭形の遺体を取り出した！

大急ぎで火葬場を脱出するルパンたち。
それに気付いて追いかけるトリュフォー。
ルパンたちは必死に逃げるが、執拗な追跡と攻撃に、うっかり
銭形の棺を川に落としてしまった。
ところがその拍子に銭形が生き返ったではないか。
驚きつつも、ひとまず銭形をつれてその場を後にする。

実は、射殺官は銭形の上司だった。銭形を殺すに忍びなかった
射殺官は、トリュフォーに内緒で麻酔弾を使ったのだ。
全てを知った銭形は、ルパンたちの協力の下、トリュフォーの
逮捕に乗り込む。そしてルパンを見逃すと、ルパンらの去って
いった窓辺に向かって敬礼するのだった。




■見どころ■

この作品と「モロッコの風は熱く」「ルパン一世の秘宝を探せ」
はとっつぁんとルパンの関係を意外な視点から魅力的にとらえた
作品。
中でも「父っつぁんのいない日」と「モロッコの風は熱く」は
大好きな作品でオススメの一本。
原作にも銭形が殺されてしまって、ルパンが静かに涙を流す
シーンがあるが（その後“目には目を”と、銭形が殺されたのと
同じ方法で復讐を果たす話）、ルパンにとって次元、五右ヱ門、
不二子に並んで唯一無二の存在なのがわかる。
明らかに他の敵とは一線を画する、ライバル以上の特別な存在
なのだろう。

ポイント１：とっつぁん殉職す。
　　今日でこそ「ルパンが殺された」だの「とっつぁんが撃た
　　れた」だのいうネタはTVSPでも扱われたことがあるだけに
　　新鮮味に欠けるかもしれないが、「とっつぁんが撃たれて
　　殉職」だなんて当時初めて見た時はかなりショックだった
　　のを覚えている。しかも終盤になってもなかなか生き返ら
　　ない上に、いよいよ葬式まで事が進むだけに「本当なの！？」
　　とドキドキ。
　　しかし実はちゃんと裏があって・・・この射撃官ととっつぁ
　　んのちょっとした小話もじ〜んとくるものがあったり。

ポイント２：ライバル以上の関係
　　一生をルパン逮捕にかけているとっつぁん、そんなとっつぁ
　　んが追いかけてくれるからルパンも盗み甲斐がある。
　　とっつぁん相手になら死を覚悟してもいいという、ルパンの
　　思いを垣間見ることができるのが以下のセリフ。
　　「例えどんなことがあろうと、とっつぁんの葬式はオレが
　　　出す。」
　　「しかしルパン、トリュフォーはお前が来るのを手薬煉引
　　　いて待ってるぞ」
　　「とっつぁんと一緒にお手手繋いで天国に行くのも乙なも
　　　んだぜ」
　　なんて粋なセリフ！しかも相手がとっつぁんだけに“柄でも
　　ない”とわかっているのか、セリフがシリアスになりきらな
　　いところがルパンらしい。
　　ラストのルパンととっつぁんのやりとりにもちょっとホロリ。
　　「ルパンめ」と自嘲気味に笑いながら帽子を目深に被りなお
　　して、ルパンに敬礼するとっつぁんはあまりにも印象的で、
　　またも胸が熱くなる。




■データ■

<放送日>
　1979年8月27日放送
<スタッフ>
　脚本／高橋伴明、杉和幸、高階秋成
　絵コンテ／御厨恭輔
　演出／御厨恭輔
　作画監督／北原健雄、児玉健嗣
<キャスト>
　加藤精三、緑川稔、広瀬正志、松田重治



■プチ用語■

作画の遊び
　五右ヱ門が真っ二つにしたヘリ。一瞬、搭乗員が手をつない
　でヘリをくっつけようとするあたりは、７２話や同様に作画
　のお遊び。
加藤精三
　トリュフォー警視を演じた加藤精三。
　『風魔一族の陰謀』では銭形を演じている。