Review & Memo


新ルパン三世
129話 『次元に男心の優しさを見た』
 




■あらすじ■

南米のジャナイカ。内戦が絶えないこの地の大統領官邸に、
軍事顧問に変装した次元がやってきた。名画“裸のビーナス”
を盗むための下調べだ。だが“裸のビーナス”を見て我が目を
疑った。なんと宙に浮いていたのだ。

ホテルに戻った次元はルパンに無線電話でこのことを報告。
その時だった。突然窓を蹴破って女が飛び込んできた!
女を追ってきた軍隊からかくまってやった次元は事情を聞くが、
女は話そうとしない。名前くらい教えてくれてもいいがな、と
いう次元に、女は「サンドラ」と答えるのだった。

その夜、次元の部屋に泊めてもらっていたサンドラは夜中に
こっそり抜け出した。クーデターで騒いでいる大統領官邸に
忍び込もうとしたのだ。
しかし軍隊に見つかり、足を撃たれてしまう。間一髪のところを
次元に助けられたサンドラは、ようやく事情を話し始めた。

サンドラの父は前のクーデターで殺された大統領だった。
父は彼女の結婚式の日に“裸のビーナス”をプレゼントすると
言っていたのだ。革命軍が蜂起する明日、サンドラは人民解放
議長のガイラと結婚するという。
革命が起これば官邸は火の海。その前に“裸のビーナス”を取り
戻したいというのだ。

しかし、“裸のビーナス”にはクモの巣状に特殊な糸が貼られて
いる。その中の1本が起爆装置と繋がっていて、ショックを与え
たり切ったりすると爆発してしまうという仕掛けなのだ。
次元はサンドラの代わりに“裸のビーナス”を取ってくる約束を
し、代わりに糸の解き方を教わる。
そして、彼女の足に食い込んだ鉛の玉を取り出してやると、気絶
して眠るサンドラを残し、一人官邸へ向かうため闇の中へと消え
ていった。

さっそく官邸へ侵入した次元は、絵の周りの糸にスプレーで色を
つけると作業を開始した。だが、官邸の周りでは激しいクーデタ
ーが続く。絶え間なく襲ってくる地響きに、繊細な作業は困難を
極める。
そして、背後には敵の影が。
もうだめか、そう思った時だった。そこに現れたのはルパンと五
右ヱ門。五右ヱ門の居合い抜きによって、ショックを与えず糸を
斬り、官邸が崩壊する直前になんとか脱出する。

翌朝、ハッと目を覚ましたサンドラは窓辺に置かれた“裸のビー
ナス”を見て、そっと涙を拭くのだった。


■見どころ■ これも本っ当〜にオススメの1本。心底惚れている作品。 ポイント1:次元メインの話はオススメが多い。   なんと言っても次元がカッコイイ。元々カッコいいんだけど   更に・・・カッコイイ。   次元の寝巻き姿に「愛しい〜っ!!!!!可愛い〜っ!!!!!」   なんて悶えさせてくれたかと思ったら、   「チップをはずむから勇気をわけてくれねぇか」なんてクサイ   セリフに酔わせてくれる。このギャップ。   しかもクサイんだけど、それが絵になるのが次元。   ハードボイルドだとかダンディズムが存分に伝わってくるこの   作品。誰ともなくボヤく姿も、ニヒルで格好いい。 ポイント2:次元メインの話は美女率が多い。   新ルで美女を挙げよと言われれば、間違いなくサンドラは外せ   ないだろう。華奢なのに芯は強いキャラは魅力的。   決して多くは語ってないし、過去も未来もなく、次元ともこれ   っきりの関わりなんだけど印象的。   作品中で次元を立てていながらも、自身のキャラもしっかり   していて印象に残る・・・この辺りが好き。 ポイント3:次元メインの話は空気がいい。   暗い部屋、タバコの火と無骨なランプの粗末な明かり。   この辺の空気が程よい緊張感を生んで作品全体を引き締めてる   ように思われる。 ポイント4:次元メインの話は語り過ぎない。   サンドラが飛び込んできた時に、ワンシーンだけ帽子の下から   チロッと目を見せるシーン。   サンドラの脚に食い込んだ鉛の弾を取り出し終え、床にナイフ   を投げる次元。   何も言わず、姿も見せず絵をプレゼントして去る次元。   そっと涙を流すサンドラ。   この辺、野暮なセリフはなし!目で語り、空気で語り・・・   古きよき時代のイギリス映画を見ているような錯覚に陥って   しまう。金子さんの脚本は、こういう空気の描き方のセンス   が本当に魅力的。 ※「絵に張り巡らされた糸を切っている→銃を突きつけられる→  隙を突いてねじ伏せる」ここの素早い動きもカッコイイので  是非スローで再生してほしいところ。
■データ■ <放送日>  1980年3月31日放送 <スタッフ>  脚本/金子裕  絵コンテ/青木悠三  演出/御厨恭輔  作画監督/北原健雄、児玉兼嗣 <キャスト>  高屋雅羅、玄田哲章、笹岡繁蔵、滝沢久美子、幹本雄之、  屋良有作
■プチ用語■ 「チップをはずむから、勇気を分けてくれねぇか」  “裸のビーナス”を奪いに一人ホテルを出る次元が、ホテルの  支配人に言ったセリフ。


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